学生服とキャスティング−『シネマ坊主 2』

シネマ坊主2

シネマ坊主2

いや、一部分だけ読んで、批判するのがまずいのはわかってます。資料として購入したり図書館で借りて、自分に必要なところしか読まなかった本は、基本的にレビューしたりしない。しかも、立ち読みで、手元に本がないから、正確な引用もできないのに。それを書く気になったというのは、どうもうちの高校生が松本人志の映画評にかなり影響を受けているようで、映画の話をしていると「マッチャンがこういっていた」というセリフがよく出てくる。で、わたしも興味を持って立ち読みしてみたら、あまりにもお粗末なところが目に付いてしまったのだ。
驚いたのは、まず『火山高』についての部分。日本映画へのオマージュを読み取るのはいいんだけど、詰襟の制服まで持ち出しちゃまずいだろう。詰襟の制服は韓国にもある。『チング』『ラブストーリー』など、最近の韓国映画にも出てくる。あと、これはドラマだが、『冬のソナタ』。*1それなのに、「あるかどうかわからない」として、論を進めている。こんなの、ちょっと調べればすぐわかることだし、自分で調べなくても、調べてくれる人がまわりにいるんじゃないの?
もうひとつ、『ミスティックリバー』についてだが、ショーン・ペンをキャスティングしておきながら、別の登場人物に「ショーン」という名前を与えているのがおかしい、と書いている点。ほかに役者はいくらでもいるのだから、ショーン・ペンをキャスティングする必要はない、とまで書いてある。「ショーン」という名前がアイリッシュに特徴的なものであり、ショーン・ペンアイリッシュであるということは、ご存じないらしい。しかし、ティム・ロビンスケヴィン・ベーコンと並べてつりあいの取れる役者、年齢的にあてまはり、アイリッシュらしいアイリッシュを演じて不自然じゃない、という条件をつけると、そうそう他にいるとも思えないが。原作にある名前が動かせないなら、キャスティングを変えろ、という発想自体、安易すぎてあきれてしまう。
タレント本としてはいいのかもしれないが、映画評というには、あまりにもものを知らなさすぎる。これを読むと、鋭い感性だけでは、映画評はムリだということは、よくわかる。

*1:そういえば、これって、10年以上前を舞台にしたものばっかりだな。最近見たドラマでは『サンドゥ、学校へ行こう』『ラブレター』『ピアノ』、すべて男子制服はブレザーだった。