逃げるだけ

「パンチ」のハンセについて、自業自得の一言で片付けたのではやっぱりあんまりだという気がするので補足。
もちろん、ユチョル(ユビンの兄)がハンセとの試合が原因で亡くなってしまったのは不幸な事故だ。ハンセ自身もたいへんな衝撃を受け、単純に加害者だということはできない。だが、たとえ自分に落ち度がなくても、ユビンに謝罪し、罵倒されても甘んじて受けなければならないのは、最愛の兄を失った彼女の気持ちを考えればしかたないことだろう。
だが、彼はそれをしなかった。ユチョルの葬式に出向くものの、ユビンが倒れるところを目撃してその場から逃げ出してしまい、ユビンとは顔をあわせずじまい。偶然再会したあとも、どうしても言い出すことができない。ソンウにそのような態度をとがめられても、そのころはユビンと親しくなっていたので、かわいいユビンを失うことになるのを恐れて、ずるずるとひきのばす。ばれるのが遅くなればなるほどユビンの衝撃も深くなるとわからないわけでもないだろうに。ソンウが自分からはユビンに真実を告げなかったことを知ると「けっこういいやつかもな」などと能天気にひとりごちる始末である。ユビンが事実を知り、激しく拒否されると今度は酒びたり。
チュ・ジンモの悩みぬく演技がよいので、なんだか悲劇の主人公のように見えるが、けっきょくのところ、この人物像は、最初のころに描かれる調子のいい客引きとまったくかわっていない。このドラマの全編を通じて、彼は精神なつらさからは逃げ続けているわけだ。
まあ、わたしがこういう見方をするようになったのも、VOD ですでにラストまで見ていて、ラストのソンウに対するハンセの言語同断な態度を知ってるからなんだけどね。
もっとも、ハンセがユチョルの葬式にちゃんと参列して、「オッパを返してー!」とユビンに泣き叫ばれ、ほうほうの態で逃げ帰ったりしていれば、その後このふたりが再会しても親しくなることはありえないので、このドラマ自体もなりたたないが。ははは。