シニカルなおとぎ話−『未来は今』

コーエン兄弟フランク・キャプラへのオマージュ。映像と音楽で、まだアメリカンドリームを信じていたころのアメリカを描き出している。演出はテンポよく、細部まで作りこまれた映像は、昔懐かしいファンタジー映画の王道といった感じ。
これだけアホ面でドタバタしたあげく、ロマンチックなシーンはそれなりに絵になる、というのは、やはりティム・ロビンスでしょう。ポール・ニューマンの悪役振りがなんともすてき。とくに、渋い声にしびれた。
そうはいっても、作られたのは90年代のアメリカなので、中身はかなりシニカル。
主人公は、社長になったのも偶然なら、その後も、ただ状況に振り回されるだけで、自分からはなにもしない。ポール・ニューマンに追い落とされてもただ絶望してさまようだけ。しかも、大晦日ビートニク・バーのシーンで、ジェニファー・ジェイソン・リーが真情をつくしても、ティム・ロビンスを絶望から救うことはできない。根性無しのお調子者が一念発起することもないし、愛も勝利しないのだ。
いいところがまったくないまま、不思議な力に助けられてハッピーエンド、いい経営者になりました、めでたしめでたし、っていうのが、すごくウソっぽくて笑える。