数年ぶりに再読−『空色勾玉』

何年か前に読んでいるのだが、そのときは、セリフがあまりに現代的なのに、なんとなくなじめなくて、続きを読もうとは思わなかった。「西の善き魔女」シリーズ、『風神秘抄』とくると、そのあたりには抵抗なくなっているので、すらすらと読めた。
光の王子と闇の姫の恋物語なのだが、単純な善悪二元論ではない。光はあこがれの対象であっても、手の届かないもの、異質なもの、厳しさ、の象徴として描かれ、闇もまた恐ろしい死の象徴であるとともに、なつかしく、はかなく、包み込むもの、として描かれる。眠っていた王子の心を現実に連れてくるのは主人公の少女であり、母として生み出したものを恋する、という物語でもある。
しかし、「親を殺すか、親に殺されるか」という予言はどうなったんだ? 父性との対決が若干消化不良だったが、そういうことを思いつくのは読み終わってからであり、呼んでいるときは物語世界にひきこまれているので、あまり気にならなかった。
西の善き魔女」はマンガ化もされているのだが、勾玉三部作なら、ドジさまだよね。頭の中では、木原敏江の絵でキャラクターが動いているのである。